【勇者様お仕置き中】全く持って不愉快である!何で命を狙われなくては成らないんだ?コッチは静かに暮らしたいだけなのに・・・・・そりゃ確かに僕は人間に比べれば身体が大きいし、彼等から見たら恐ろしい姿をしているのかも知れない。体力も魔力も強いし数々の魔法を使え、ついでに雷も操れるし炎も吐け空も飛べて、敵を睨んだだけで凍り付かせる事が出来るさ。さらに眼は遠くのモノを見渡せる“千里眼”や未来が見える“予知能力”を持ってるし、耳は蟻の足音だって聞き分けられるんだ。
でも僕は極力人間との接触は避けて来たし、無闇に人を傷付けたくないから、人目を避け山奥へ密林へと逃げるように引っ越している。一度もコチラから人間を襲った事は無かった筈だ!なのに人間は僕の事を“魔王”と呼んで、何度も命を狙って来る。僕が一体何をしたと言うんだ。
どこかの街を一晩で廃墟にしたって?何時何所で誰がやったんだい、少なくとも僕はしてないぞ!
どこかの国を滅ぼしたって?そんな事やった覚えは無いよ!
どこかの街で満月の度に若く美しい娘を生贄として要求し喰べたって?冗談じゃない若く美しい女の子なら綺麗に着飾らせて愛でたり、それを脱がして楽しんだ方がイイに決まってるじゃあないか!
全く人間は変な噂を流し尾鰭を付けて、勝手に僕を怖がっているだけじゃあないか。少なくとも生まれて此の方百数十年の間、僕は一度も人間を殺した事は無いし、食べた事も無い。街を襲った事も、船を沈めた事も、国を滅ぼした事も全く無いんだ。そりゃあ傷付けた事が無いと言えば嘘になる。命を狙われてるのはコッチなんだから、自分の身を護る事は当然だろう。
大体ねェ僕は普段、本来の姿を隠し人間の姿をしている。巨大な身体は、その姿で居るだけで大きなエネルギーを消費するから節約してるんだ。その姿は人間で言えば10歳から15歳位の子供の姿らしい。僕の種族は寿命が数千年単位であるから、それに比べればマダマダ僕も子供なのだろう。
でもそんな僕の姿を見ると、勇者志望の人間達はチャンスとばかりに襲い掛かって来る。もっともそんな奴らはオシオキとして、半殺しの目に合わせてやるんだけどね。だけど一度だって殺した事が無いんだ。なのにそんな奴らに限って「魔王はヤッパリ手強かった」「俺達のパーティーは全滅した」なんて言い触らすんだ。全滅って君は生きてるじゃあないか・・・と言うより一人だって欠けちゃ居ないだろう?
そんな訳で今日も僕のテリトリーに女の子の二人組みが侵入して来た。群がる魔物や魔獣を、僕の配下と思って倒しながら・・・勘違いも甚だしい!人里離れた山奥なんだから、獣魔が多くても不思議ないでしょう?
あの強さじゃあ僕の城まで来ちゃうなあ。アノ顔には見覚えがある、確か人間を滅ぼそうとした魔王を倒した勇者様だ。参ったなあ、いい加減にして欲しいんだけど・・・・・・・・・・アノ強さじゃあ手加減出来ないかも知れないなァ!
酷い・・・幾ら何でも酷過ぎるっ!僕の何所が悪いんだっ!!下の街で何を吹き込まれたのかは知らないけど、コッチが手加減してるのをイイ事に、こんなにボロボロに成るまで叩きのめさなくても良いじゃないかっ!!!
僕は翼と尻尾、そして爪を伸ばしただけで、本来の姿に戻る暇も無い位に素早く、そして徹底的に叩きのめされたんだ。僕の釈明なんか聞きもしないで・・・死ななかったのが不思議な位だよ。
翼はもぎ取られ、牙も爪は折れ、体中がアザだらけだ。オマケに尻尾が一番痛いのに、剣で地面に縫い付けられちゃった。まったくトンデモ無いジャジャ馬娘達だ!
しかし僕だってタダじゃ殺られない。自慢じゃないが百年以上ただ生きて来ただけじゃない。勉強だって修練だって欠かさなかったんだ。僕は彼女達と戦いながら、何とか縛り上げ自由を奪う。
でも僕を怒らしたのは、彼女達の態度だった。幾ら説明しても聞きやしない、僕は一言謝罪して貰えれば良かったんだ。なのに赤毛の娘は汚い言葉を吐き続けてるし、緑の髪の娘はズット僕を睨んでいる。まるで憎い敵を見るみたいにさ!
そう言う積りなら僕にも考えが有るぞ!絶対に“ゴメンなさい”って言わせてやる。